このページには、学級風土アセスメントとSocial Emotional Health Survey(SEHS)についての資料を掲載しています。
1.学級風土アセスメントについての資料
学級風土尺度(Classroom Climate Inventory: CCI)を用いて学級風土をアセスメントし、コンサルテーションを行う実践を続けてきました。学級のアセスメントは、パーソナリティ・アセスメントなど他のアセスメントと同様に、丁寧かつ慎重に行われるべきものと考えますが、下位尺度などを観察の視点などとして活用頂くことも可能かと思います。現在CCIはオンライン化しており、オンラインで集計やコンサルテーションが可能です。中学生用・小学生用・韓国語版があります。
<学級風土尺度CCIの特徴と下位尺度>
学級風土尺度CCIの特徴は、児童・生徒が、直接に学級の個性を回答することです。例えば、Q-Uやアセスなどでは、児童・生徒が自分自身の適応感等について回答し、その布置から学級の特徴を考えます。しかし学級風土尺度CCIでは、児童・生徒が自分たちのクラスを「どのようなクラスと思っているか」を尋ねます。児童・生徒の「学級についての認識」を回答するタイプの質問紙です。
こうしたタイプの尺度は、海外などで多く使用されています。例えば「このクラスでは、掃除当番をきちんとする人が多い」など学級成員間で意見が一致しやすい比較的客観的な項目と、「クラス全体が嫌な雰囲気になることがある」など学級成員間でも意見に差が生じやすい比較的主観的な項目を採用していることも特徴です。各項目の級内相関と級間相関の比である相関比から、項目機能を統計的に確認しており、新版中学生用学級風土は227学級(24中学校、有効回答7094人)のデータで作成されています。
下位尺度は、「学級活動への関与」「生徒間の親しさ」「学級内の不和」「学級への満足感」「自然な自己開示」「学習への志向性」「規律正しさ」「リーダー」の8つですが、実践的活用のために、「生徒間の親しさ」「学級内の不和」「自然な自己開示」を分割し、図のように、生徒から見た学級像が図示できる仕組みになっています。図中縦の点棒線は男女それぞれの分布(標準偏差)、*は効果量.5以上の差が全国平均に比してあることを示しています。
上記を小学生向けに短縮した小学生版は、小学校5,6年生の98学級(38校、有効回答2569人)のデータから作成され、「学級活動への関与」「学級内の不和」「学級への満足感」「自然な自己開示」「学習への志向性」「規律正しさ」の6つの下位尺度があります。
人に「個性」があり、人生に「物語」があるように、学級にも、ひとつひとつ、その学級の「個性」があり「物語」があります。学級風土尺度CCIも、例えば1学期半ばと2学期の終わり等、複数回の実施をして、担任の先生とお話すると、その学級の変化とその背景にある「物語」が見えてきます。学級風土尺度CCIは、パーソナリティ・テストのように、その学級の「個性」や「物語」を理解し、子ども達の感じている学級像を、教師やスクールカウンセラーが一緒に理解するためのツールです。
なお、理論的背景や項目などは下記の論文等にまとめました。
<CCIによるアセスメントの事例等の紹介資料>
伊藤亜矢子編著(2022)学校で使えるアセスメント入門:スクールカウンセリング・特別支援に活かす臨床・支援のヒント,遠見書房
Ito,A.(2011)Enhancing school connectedness in Japan: The role of home room teachers in establishing a positive classroom climate. Asian Journal of Counselling,18(1/2),41-82
伊藤亜矢子編著(2009)学校臨床心理学 学校という場を生かした支援 北樹出版
伊藤亜矢子(2003)スクールカウンセリングにおける学級風土アセスメントの利用:学級風土質問紙を用いたコンサルテーションの試み 心理臨床学研究,21 (2), 179-190
<CCIの項目等の資料>
新版中学生用
伊藤亜矢子・宇佐美慧(2017)新版中学生用学級風土尺度(Classroom Climate Inventory; CCI)の作成 教育心理学研究 65 (1), 91-105.
https://doi.org/10.5926/jjep.65.91
小学生用
伊藤亜矢子(2009)小学生用短縮版学級風土質問紙の作成と活用 コミュニティ心理学研究,12 (2), 155-169.
https://doi.org/10.32236/jscpjournal.12.2_155
旧版中学生用
伊藤亜矢子・松井仁(2001)学級風土質問紙の作成 教育心理学研究,49,449-457.
https://doi.org/10.5926/jjep1953.49.4_449
韓国語版
Choi,H., Rhee,E., Ito,A.,& Lee,S. (2014)Cross-Cultural Validations of the Factor Structure for the Korean Version of Classroom Climate Inventory (CCI)
Japanese Psychological Research,56,349-360.
https://doi.org/10.1111/jpr.12062
理論的背景など
伊藤亜矢子・松井仁(1998)学級風土研究の意義 コミュニティ心理学研究,2,56-66.
https://doi.org/10.32236/jscpjournal.2.1_56
2.Social Emotional Health Survey(SEHS)についての資料
SEHSは、Co-Vitalityという考え方から生まれた尺度です。ポジティブな要因を複数持つことで、要因同士の効果が例えば掛け算のようになって、より大きな効果を持つという考え方から、多面的に子どもの持つ良い資源を知ろうとするものです。自己信頼に関わる「自己意識」や「自己効力感」「根気強さ」、他者信頼に関する学校・家族・友人からのサポート、感情のコンピテンスや生活の充実度、というように、多面的に子どものメンタルヘルスをアセスメントできます。カリフォルニア大学のファーロング博士によって作成されたものですが、世界各地で翻訳されて使用されています。
<SEHSの資料>
小学生用
Iida, J., Ito, A., Aoyama, I., Sugimoto, K., Endo, H., Chan, M., & Furlong, M. J. (2021) Validation of the social emotional health survey-primary among Japanese elementary school students. The Educational and Developmental Psychologist, 38, 121-130.
https://doi.org/10.1080/20590776.2021.1899748
中学生用
Ito, A., Smith, D. C., You, J., Shimoda, Y., & Furlong, M. J. (2015). Validation and utility of the Social Emotional Health Survey-Secondary for Japanese Students, Contemporary School Psychology, 52, 349–362.
https://doi.org/10.1007/s40688-015-0068-4
伊藤亜矢子・下田芳幸(2013)日本版Co-Vital尺度からみた個人資質の学級差 : スクールカウンセラーによる全校型支援に向けた基礎的検討 日本教育心理学会総会発表論文集 55, 350.
https://doi.org/10.20587/pamjaep.55.0_350
高校生用
飯田順子・伊藤亜矢子・青山郁子・杉本希映・遠藤寛子・ファーロング マイケル J.(2019)日本語版ソーシャル・エモーショナル・ヘルス・サーベイの作成 心理学研究,90,32-41.
https://doi.org/10.4992/jjpsy.90.17222
<SEHS関連サイト>
Social Emotional Health Survey(SEHS)作成の元になったCovitality Projectのページ
https://www.covitalityucsb.info/
Social Emotional Health Survey(SEHS)原作者 Dr. Mike Furlongのページ
https://linktr.ee/mjfurlong
3.コンサルテーションについての資料
放送大学のテキストに、コミュニティアプローチ、コンサルテーション、コラボレーションについて記しました。学校以外の多様な領域についての実践も、分担執筆をしてくださった先生方が書いてくださいました。
伊藤亜矢子編著(2021)臨床心理地域援助特論’21 放送大学教育振興会