スクールカウンセリングというと、一般に、1対1の面接室でのカウンセリングを校内で行うとイメージされることが多いですが、スクールカウンセラーの役割は、1対1のカウンセリングだけではなく、校内で、すべての子どもの心の健康と健康な成長のために、さまざまな活動をする役割があると考えています。図1の右側に示したように、全校生徒を視野に入れた予防成長促進的支援です。こうした支援モデルをここでは、「スクールカウンセラーの全校型支援」と呼んでいます。
全校型支援モデルは、特殊なもの、と誤解されるかもしれませんが、実際には、図1の左側のように、コンサルテーションやコラボレーションを積み重ねる形で、学校全体の支援を行っているスクールカウンセラーは多いと思います。日本のスクールカウンセリングが培ってきた貴重な取り組みのひとつではないかと考えています。
全校型支援モデルは、多対1どころか、先生方との協働によるという意味で、多対多の実践モデルです。それだけイメージもしにくく、実際にどのように行ったらよいかの方法論も、つかみにくい面があると感じています。
そこで、スクールカウンセラーが、実際に、どのように工夫して先生方と協働し、全校型支援モデルを構成する実践を行っているのか。諸外国におけるスクールカウンセラーの取り組みと比較した時に、どのような特徴があるのか。また、スクールカウンセラーの実践を次の世代に繋いでいく「養成」のために、どのような言葉で実践を表現し、伝えていくことができるのか。そのような課題意識から「協働的コンサルテーションによるスクールカウンセラーの全校型支援の展開方法」について調査等を行いました。
このサイトでは成果報告の一部として、スクールカウンセラーの学校現場での工夫等に関する情報と、組織レベルのコンサルテーションのツールとして学級風土尺度(Classroom Climate Inventory; CCI)やSocial Emotional Health Survey(SEHS)などと関連事項、学校での心理支援実践の国際動向等に関連した情報を、ささやかですが掲載できればと思っております。
伊藤亜矢子
(学習院大学 文学部教育学科)